本ブログは観光業、企業接待、留学生対応等で英語案内が必要ながら、多忙で準備に時間をかけられない方々の為にすぐに使える情報を分かりやすく解説しています。
👉タイトルの各語は「仏教哲学者」”Buddhist philosopher”、「禅思想」”Zen philosophy”.「瞑想」”contemplation”と言うことができます。
今回はビジネスで北陸金沢へ来日中の重要顧客を商談後、禅研究家として世界的に著名な鈴木大拙の業績と思想を展示する『鈴木大拙館』へ、急遽ご案内することになった際の英語表現をご紹介します。
👉本ブログでは、雑踏の中を一緒に歩きながら口頭で、よりネイティブに自然で分かり易い表現を目指しておりますので、詳細で高度な内容をご要望の方は公式HPや専門家サイトをご参照ください。
1. 基本情報
まずは、ご案内前の基本的なご説明例を段階的にご紹介します。いつも通り、日本語で説明できないことは英語でも説明できませんので、日本語→英語の順番で進めて参ります。
👉海外、特に欧米での鈴木大拙の知名度は高く、鈴木大拙館への訪問者はそれなりの知識を持っている方もおられますが、単に名前だけは知っているので折角だからという方も多いので、本番のご案内をスムーズに進める為にも、何とかここは上手くお伝えしたいところです。
1.1:基本用語について
このブログでは本館案内の大前提である2名の偉大な哲学者と建築家で頻繁に使われる形容表現は、それを何度も読み聞きする負荷を下げる為、文中では単純に「名前」「彼」だけの表現に留めております。その辺りは基本用語として下記に纏めましたので、ご案内時に必要に合わせて適時挿入していただけれと思います。
- 鈴木大拙の主な形容表現:
- 世界的な仏教哲学者:a world-renowned Buddhist philosopher
- 高名な哲学者: a renowned philosopher
- 世界的に著名な禅学者:a world-renowned Zen scholar
- 鈴木大拙哲学:the philosophy of D.T. Suzuki
- 建築家(谷口 吉生(たにぐち よしお)の主な形容表現
- 世界的に著名な建築家:a world-renowned architect
- 著名な建築家:a renowned architect
1.2 入館時の心得
本館には鈴木大拙の精神性を来場者に考えていただきたいユニークなコンセプトがあり、単に見て楽しんでいただく展示館ではない点を入館時にご説明しておくことが望ましいので、その辺り纏めてみました。ここもお好みに合わせてお試しください。
- 本館には目に見えない鈴木大拙の精神性を展示するユニークなコンセプトがあります。
- 単に物を見て楽しんでいただく展示館ではないため、いくつかご協力をお願いいたします。
- 本館は考える場、学習する場でもありますので、館内はできるだけ静かに鑑賞お願いいたします。
- 館内の指定の場所は撮影禁止ですが、それはシャッター音が学習者の妨げになるからです。
- その為、ガイドからのご説明も大声を出さず最小限に留めますので予めご了承お願い致します。
- 勿論、中での飲食は禁止ですが、蓋のついたペットボトルも中で飲むことはできません。
《英訳例》
- This museum has a unique concept of exhibiting invisible things, specifically the spirituality of D.T. Suzuki.
- It is not an ordinary exhibit museum where you can simply look at things and enjoy them, so we want your cooperation in a few ways
- The museum is a place for thinking and learning, so please view the exhibits as quietly as possible.
- Photography is prohibited in designated areas of the museum mainly because the sound of the shutter can disturb learners.
- Therefore, please understand that explanations from guides will be kept to a minimum and will not be given in a loud voice.
- Of course, eating and drinking inside is prohibited, but drinking from plastic bottles with lids is also not allowed
1.3 入館時のコメント
入館時に使える情報を説明形式で3段階の視点でいくつか置いてみましたので、お相手に合わせて使えそうなものあればお試しください。
a)かいつまんで言うなら(標準的インバウンド向け)
- 彼の禅思想を、可能な限り最小限の展示で最大限に伝えようとした博物館です。
- この建物は彼の生まれた近所で建てられたのですが、とても哲学的な環境なので彼の運命を感じます。
- これは彼の禅思想を建築で表現する為に著名な建築家により十年ほど前に建てられました。
- この博物館はモノを展示するのでなく、禅寺のように来場者の瞑想のための空間を展示しています。
《英訳例》
1. The museum attempts to convey his Zen philosophy to the maximum extent possible with the least amount of exhibits possible.
2. This building was built in the neighborhood where he was born, and we feel it is his destiny because it is a very philosophical environment.
3. It was built about ten years ago by a well-known architect to express his Zen philosophy through architecture.
4. This museum does not exhibit objects but rather provides a space for visitors to meditate, like a Zen temple.
b) もっと簡略化するなら(英語が第二言語の方向け)
👉少し簡略化してみました。(逆に長くなったものもありますが。。。)英語が母国語でない人や鈴木大拙の名前以外について殆ど知識のない方向けにどうでしょうか。
- 彼は禅の無の境地を目指したので、その「無」が有形の建築で表現されたユニークな美術館です。
- 彼の詳細を知りたい人はがっかりかもしれませんが、彼のマントラである「無」が見れるかもしれません。
- 彼は国内より海外で有名なので、あなたは彼の禅のメッカへの外国人巡礼者と見えるかもしれません。
《英訳例》
1. Since he aimed for the state of nothingness in Zen, this is a unique museum where his intangible ‘nothingness’ is expressed in tangible architecture.
2. Those who want to know more about him may be disappointed, but they may see his mantra of ‘nothingness’ there.
3. Since he is more famous abroad than at home, people might see you as a foreign pilgrim to his Zen Mecca.
c) 一言で済ませるなら(米国人向け2例)
👉もし一言で済ますとしたらこんな感じでしょうか。特にアメリカ人は同じ意味の単語でも短い方を好んで使うので米国人向き?よりしっくりくる方をお試しください。
- それは枯れない水庭がある鉄筋ビルの禅寺で、禅愛好家には一見の価値ありです。
- 見た目殆ど何もないこの美術館は、彼の理想の「無」をうまく表現しています。
《英訳例》
- It is a Zen temple in a reinforced building with a water garden that never dies and is worth a visit for Zen enthusiasts.
2. This seemingly almost nothing museum successfully expresses his ideal ‘nothingness’.
2.インバウンドの視点!笑いが取れるかも?
ここからは、事前説明でなく、実際に鈴木大拙館の中を見ながら、各所を眼の前にして自然に湧き上がるインバウンドの疑問や好奇心を想定した説明例です。👉実際に使えるかどうかは相手次第ですが、真面目なネタ、日常会話でも使える表現、笑いを狙ったセリフも散りばめていますので、もし使えそうな箇所あれば一度お試しください。
Q1 名前 のD.T. Suzukiはどういう意味ですか?
”What does the name D.T. Suzuki mean?”
入館時に限りませんが、案内中にD.T. Suzukiの名前の意味を聞かれることがありますので、それを想定したネタです。いつも通り、順序は日本語>英語で、英語音声は前半の真面目パート(1-5)とおふざけパート(6-10)の2ファイルに分かれています。👉本パートの英語表現習得用音声ツールはこちらへ!
- 彼の本名はファミリーネームが「鈴木」、ファーストネームが「貞太郎」と言います。
- 彼には「大拙」という、トップクラスの仏教信徒に付けられる法名が加わっていて、彼の仏教の師匠が名付けたと言われています。
- 「大拙」の文字通りの意味は「とても拙い」(very unskilled)ですが、彼の師匠の意図は「繕わない」(No mending, just being).つまり「とても巧い」(very skillful)の意味を込めたそうです。
- なので、英語では〈Daisetz Teitaro Suzuki〉、略してD.T. Suzuki と呼ばれています。
- でも、発音が良くないと、Diety Suzuki (神様!鈴木)に聞こえてしまうことがあります。
- 彼の禅を世界に啓蒙した精神性の高さから、Diety Suzuki が正しい名前と勘違いしている人もいるかもしれません。
- そういえば、たまにお辞儀をして本館に入る人も見たりしますので、その人にとって、この鈴木大拙館は、彼を祭る神社のようなものかもしれません。
- でも、仏教哲学者の彼にしてみれば、神社扱いされて, 来場者が頭を下げて彼の美術館に中に入るのを見てあの世で怒っているかも。
- 生前、全ては「あるがまま、ただ在るだけ」(No mending, just being)とよく言ってたので、もしかしたら「曲げない、見るだけにしろ」(No bending, just seeing)って怒りですかネ?
《英訳例》
- His real name is “Suzuki” as a family name and his first name is “Teitaro”.
- He has the added Dharma name “Dai-setz,” which is given to a top-class Buddhist layman, and is said to have been named by his Buddhist mentor.
- The literal meaning of “Dai-setz” is “very unskilled,” but his mentor’s intention was “No mending, just being”. In other words, he was said to mean “very skillful” (very skillful) with this Dharma name.
- Therefore, in English, it is called “Daisetz Teitaro Suzuki,” or “D.T. Suzuki” for short.
- But if you don’t pronounce it well, it can sound like Diety Suzuki (God! Suzuki).
- Because of the spiritual significance with which he enlightened the world about Zen, some may mistakenly assume ‘Deity Suzuki’ as his correct name.
- Come to think of it, sometimes we see people bowing as they enter the D.T. Suzuki Museum, so for them, this building may be akin to a shrine dedicated to him.
- However, as a Buddhist philosopher, he might be displeased in the afterlife at being treated as a shrine and seeing visitors bending their heads when entering his museum.
- Before his death, he often used to say that “No mending, just being”, so perhaps he would be displeased, saying, ‘No bending, just seeing’?
Q2 この三角のくぼみは何のためにあるのですか?
What are this triangular alcove for?/What is the purpose of this triangular alcove?
入場すると、真っ直ぐの通路の半ばに意図的に作られた三角の出っ張り箇所がありますので、それをネタに、楠に係る英語表現を織り込んでみました。このQ2では各文毎に日英で区切りました。このパートも前半の真面目パート(1-7)と後半のおふざけパート(8-12)は話者とトーンが変わります。👉本パートの英語表現習得用音声ツールはこちらへ!
- このくぼみは、眼の前の庭と、そして特にあのくすのきを鑑賞するために作られました。
- This alcove was made to appreciate the garden in front of you and especially that camphor tree.
- 驚いたことにあの楠の木は鈴木大拙が子供の頃から既にあったもので、彼はこの木を見ながら育ったそうです。
- Surprisingly, that camphor tree was already there when D.T. Suzuki was a child, and it is said that he grew up looking at it.
- 楠の木は防虫剤や薬として使われるショウノウが抽出できる為、古来より人工的にも植えられて大切にされました。
- Camphor trees were also planted artificially and cherished since ancient times because people can extract camphor, which is used as medicine.
- 薬のカンフル剤として、心臓を刺激して血圧を上げるために注射されました。
- Camphor, used as a drug, was specifically injected to stimulate the heart and increase blood pressure.
- もしかして鈴木少年がこの木に刺激を受けて、疲れた現代人に禅で心のカンフル剤を打ったのではと想像すると面白いですね。
- It’s intriguing to imagine that the young Suzuki may have drawn inspiration from this tree, using Zen as a mental camphor for weary modern individuals.
- 何より楠木からカンフル剤を抽出するには蒸留工程も必要で大変な手間と忍耐が必要です。
- Above all, extracting camphor medicine from camphor wood include a distillation process, which requires a great deal of time and patience.
- 彼が禅を世界に広めた忍耐力もその楠木から自然と身についたのかもしれませんね。
- Maybe the patience with which he spread Zen worldwide was also influenced by that camphor tree.
- だからかもしれません。私が何故、安直にすぐ良い美味しい結果ばかり求める性格になったのか。
- Maybe that’s why I developed a personality that only seeks good and tasty results quickly and easily.
- 私の生まれ育った家の庭には柿の木といちじくの木がありました。
- There was a persimmon tree and a fig tree in the yard of the house where I was born and raised.
- 私は食べたい時にいつでもその実を木からもいで美味しい思いができたので忍耐が育つわけもないですね。
- I could just rip the fruit off the tree and eat it whenever I wanted, with no hassle or patience required.
- でもこんな忍耐のない私でも、もしかして唯一、良いことをしているのではと思う時があります。
- But even with my lack of patience, I sometimes think that maybe I am doing the only good thing I can do.
- こんな私に関わった両親、友達、そして今日ご案内しているお客様の忍耐力を高めるのにお役に立ってるのでは、と。この楠みたいに。
- By being involved with me in this way, am I contributing to increase the ability of endurance of my parents, friends, and the guests I am showing today? Like this camphor tree.
Q3 この掛け軸に描いてある○△□はどんな意味ですか?
”What do the ○△□ on this hanging scroll mean?”
展示コーナーの掛け軸を一緒に観ながら、よく聞かれる質問をベースに、日常会話の雑談でも使える英語表現を盛り込んで纏めてみました。いつも通り、英語音声は前半真面目パート(1-7)と後半おふざけパート(8-15)の2ファイルで話者とトーンが変わります。
- この掛け軸は大拙の直筆ですが、○△□自体は彼のオリジナルではありません。
- This drawing on the hanging scroll is by D.T.’s hand, but the figures—a circle (○), a triangle (△), and a square (□)—are not his original creation.
- 元々これはサムライ時代の画家でもあった禅僧が描いたもので、真意不明で色々な意味で解釈されています。
- Originally, this was painted during the samurai era by a Zen monk who was also a painter, and it has been interpreted in many ways, with its true meaning remaining unresolved.
- 禅には言葉で教えるのでなく自ら悟らせるという基本思想とその為の禅問答という伝統的手法があります。
- Zen teaches the principle of not using words to instruct, but instead letting people realize truths by themselves, often using the traditional method of Zen questions and answers.
- 答えがない色々な謎掛けをして自ら考えさせて何らかの真理を悟られせようとする狙いがあり、この絵も禅問答と考えられています。
- The aim is to encourage people to think independently and discover some form of truth by presenting them with various riddles that have no clear answers, and this painting is considered an example of a Zen question and answer.
- 大拙はこれを宇宙を表現していると解釈し、掛け軸以外でも色々な場所で言及しています。
- Daisetz interpreted this as a representation of the universe and referenced it in various places beyond just hanging scrolls.
- 彼によると「○」は無限、「△」は「形の元」、「□」は△を2つ重ねたものだそうです。
- According to him, the circle (○) represents infinity, the triangle (△) is the source of everything, and the square (□) is formed by two triangles (△) stacked together.
- この二重過程が無限に続き、無数の事象が生じるものが宇宙であるというのが彼の解釈です。
- His interpretation is that the universe is an endless series of these stacking processes with triangles, leading to an infinite array of events.
- でも私達の様な俗人には、このような、難解な禅問答には遠く理解が及びません。
- But for laymen like us, such esoteric Zen questions and answers are far beyond our comprehension.
- もしかして、多くの人は特にお腹が空いている時は「○△□」を串に刺したおでんを連想するかもしれません。
- Perhaps many people, especially when they are hungry, might associate oden, traditional Japanese simmered vegetables, with this figure—○△□—on a skewer.
- 日本の有名なアニメにはこの串刺しおでんをいつも持って歩くキャラクターがいます。
- A famous Japanese anime features a character who always walks around with this skewered oden.
- ○は輪切りの大根か、茹で卵、△はこんにゃく、□はかまぼこに見えます。
- The circle (○) looks like a sliced radish or boiled egg, the triangle (△) looks like konjac (Devil’s Tongue), and the square (□) looks like kamaboko, a fish cake.
- ○は無限に終わらない食欲を表し、△は食の基本、試食を構成するのですかね?
- Can we assume that the circle (○) represents the never-ending appetite, and the triangle (△) constitutes the basis of food, like trial tasting in daily life?
- □は試食を重ねたてできる文字通りまともな食事(square meal)の意味のように見えます。
- The square (□) literally seems to mean ‘square meals,’ decent meals that can be completed with repeated, everlasting trial tastings.
- その図形から宇宙を連想するその無欲の禅僧と食欲を連想する我々凡人はあまりに対照的ですね。
- The ascetic Zen monk who associates the figure with the universe is in stark contrast to us mere mortals who associate it with our appetites.
- でも美味しく食べた後は、後には何も残らないので、禅の理想の「無」の世界を実現しているかも!
- But after eating delicious meals, of course, there is nothing left afterward, so we may be able to achieve the Zen ideal of ‘nothingness’!
御礼🔶後書き
🔶今回も最後まで読んで頂き大変ありがとうございます。もし何かご意見やリクエストございましたらお気軽に『Help Desk』にてお声がけくださいませ。Gold🔶v.3a.1a.1a
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